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水循環の明るい水来(みらい)へ「スウェーデンのマルメ市のエコシティ、アウグステンボー地区の開発」

水循環の明るい水来(みらい)へ

もう一昔前のことになりますが、2005年8月にデンマークの首都コペンハーゲンで開催された
第10回都市雨水排除国際会議に出席する機会があり、
その会議のプログラムの中でスウェーデンのマルメ市のエコシティ、アウグステンボー地区の
開発状況を見学する機会がありました。マルメ市はコペンハーゲンと海峡を隔てて、
すぐ対岸に位置していて、隣国のコペンハーゲンから簡単に電車で行くことが出来ました。

スウェーデン最南部に位置するマルメ市はスウェーデン第3の都市で、
人口34万(2019年12/31現在)となっています。
エコシティというコンセプトで開発を行ったアウグステンボー地区の開発の経緯は、以下の通りです。

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アウグステンボー地区の集合住宅は、1950年代にマルメ市住宅公社により、
スウェーデンの「国民住宅」運動の精神に基づいて建設されました。
しかし、1970年代には古びてしまい、多くの住民が別の場所へ転居するようになりました。
そこで、1990年代に入り、市民住宅公社は昔の地位を取り戻すべく「エコシティ アウグステンボー」
プロジェクトを立ち上げることとなりました。

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プロジェクトは1998年住宅公社とマルメ市の共同プロジェクトとしてスタートしました。
最終目標は、アウグステンボーを社会的、生態的、経済的に持続可能な居住地域に変えることでした。
そのための重要な視点は、住民参加と彼ら自身のコミュニティの強化にありました。

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この再構築プロジェクトの特徴の1つとして、開水路による排水システムを採用したことが挙げられます。
表面排水を主体とし、生態系にも配慮した新しい排水システムを新設し、これを既に設置されていた
合流式下水道に接続しました。
また、末端の各排水区では、様々なアイデアから考え出されたいくつもの技術が試みられ、
今でも新たな開発が続けられています。

図1に、アウグステンボー地区の全体鳥観図を示します。
アウグステンボー地区の全体鳥瞰図
図1 アウグステンボー地区全体鳥観図
①屋上植物園(10,000㎡):一般公開、研究
②道路下の雨水貯留槽からポンプアップ、水路網に導水
③コンクリート水路に排水
④雨水排水用湿地
⑤底面にたまねぎ状の出っ張りのある溝:住民のデザイナーの設計、自浄作用の向上
⑥一対の調整池:2つの池水をポンプで交換、洪水時は2つの池間の草地に溢水
⑦屋上緑化住宅
⑧立方体の出っ張りのある水路:沈殿による浄化
⑨校庭のバスケットボール場と円形競技場
⑩公園内の排水溝:洪水時は周辺の芝地に溢水
⑪最終調整池:南排水系統
⑫周辺住民のデザインによる池:それぞれのデザインコンセプトがある
⑬マカダム(割り石)舗装底面をもつ側溝
⑭最終排水路:北排水系統
⑮最終排水路:北排水系統
⑯最終調整池:北排水系統

屋上緑化試験施設
写真1 屋上緑化試験施設
(一般公開用植物園を兼ねている)

底面にたまねぎ状の出っ張りのある溝(開水路)
写真2 底面にたまねぎ状の出っ張りのある溝(開水路)

写真3 調整池(子供の遊び場になっている)
写真3 調整池(子供の遊び場になっている)

忌部氏写真