中国における都市の健全な水循環創生に向けた取り組み(スポンジ都市)
習近平主席のスピーチとスポンジ都市の定義
2013年12月12日に行われた「都市化に関する中央工作会議」において、
習近平主席は以下の内容のスピーチを行いました。
「都市の排水能力を向上させる際には、
敷地内の自然な水循環を利用した雨水の保水と貯留を優先する必要がある。
これにより、自然の貯留、浸透、浄化が可能なスポンジシティを構築できるであろう。」
これを受けて、中国国務院からスポンジ都市の建設促進のためのガイドラインが打ち出され、
スポンジ都市の定義が以下のように説明されています。
「スポンジ都市は、都市計画と開発管理を強化することにより、建物、道路、緑地、水システム、
その他の生態系が雨水の流出を自然に貯留、浸透、保水、処理するための完全な役割を果たすことを
目指す都市開発のあり方である。」
図1 スポンジ都市のイメージ
都市がスポンジのように環境変化への適応、自然災害の対応などの面で
良好な「弾力性」があり、雨が降った時に、雨水の吸収、貯水、浸透,浄水などの機能を有し、
必要に応じて貯めた雨水を利用できることを目指している。
中国の水事情
中国では、全国657都市のうち300都市が水不足に悩んでいると言われています。
都市の平均日生活用水量は2000年に220ℓ/人/日でしたが、節水型都市の建設・推進により、
2012年には172ℓ/人/日に抑えられたとしています(中国側の資料による)。
ちなみに東京都では220ℓ/人/日(平成26年度)となっています。
また、中国の水資源の構造は、生活用水13%(日本19%)、工業用水24%(日本14%)、
農業用水61%(日本67%)の割合となっており、日本に比べて、生活用水の割合が低く、
その分工業用水の割合が高くなっています。
このような水事情を踏まえて、スポンジ都市建設がその解決策となることが期待されています。
図2 中国の水事情
六字方針
スポンジ都市の基本的な取り組みとして、滲・滞・蓄・净・用・排の六字で表した方針が打ち出されています。
これは滲(雨水を地中に浸み込ませる)、滞(雨水を一時的に滞水させる)・蓄(雨水を備蓄する)・
净(雨水を土壌で浄化する)・用(雨水を利用する)・排(雨水を排水する)という基本方針を意味しています。
この方針は、日本の「健全な水循環に配慮したまちづくり」や
米国の「低影響開発(Low Impact Development)」、
「グリーンインフラ(Green Infrastructure)」や英国、
ドイツの「持続可能な都市排水システム(Sustainable Urban Drainage System)」などと相通ずる
取り組みと言えましょう。
図3 六字方針